歯周病と認知症との関係については、これまでも話題になっていましたが、そのメカニズムが明らかになってきました。
九州大学の武準教授によれば、歯周病の原因菌を3週間マウスに投与した結果、マウスの脳内にあるアルツハイマー型認知症を引き起こすタンパク質・アミロイドβが10倍に増えて記憶力が低下したことが、同教授の研究チームによって確認されたようです。
九州大学のHPに公開されている「歯周病菌感染は全身の脳老人斑成分を脳内輸入させる」2020.07.03には、以下のような説明があります。
歯周病原因菌であるジンジバリス菌(Pg菌)を全身に慢性投与することにより、正常な中年マウスの脳外で産生される脳老人斑成分であるアミロイドβ(Aβ)が脳内に取り込まれることを初めて発見しました。
引用(一部):九州大学HP「歯周病菌感染は全身の脳老人斑成分を脳内輸入させる」
歯周病によってつくられたアミロイドβが、血管から体内に侵入して、その後、脳内に蓄積されて記憶障害などを引き起こす可能性があるとのこと。
これまでも歯周病の毒素が脳内に蓄積されて、20年ぐらいで認知症が発症すると言われてきましたが、マウスを使った研究では意外に早い段階で発症することも。
アルツハイマー型認知症とは
アルツハイマー型認知症は、脳が少しずつ萎縮して、認知機能が低下していく病気です。脳の萎縮により頭蓋骨との間にすき間ができる、あるいは「アミロイド斑(老人斑)」と呼ばれる病変が見られます。
30代~50代でも認知症を発症することがあり、「若年性アルツハイマー型認知症」と呼ばれますが、これは遺伝が関係していると言われています。
若いときにはなぜ発症しない?
アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβは、分解されて脳から排出されますが、年齢とともにその機能が衰えて蓄積していきます。
アミロイドβが神経細胞に溜まるとアミロイド斑となり、これが神経細胞を殺傷することで、情報伝達が正常に行われなくなります。つまり、アルツハイマー型認知症を発症するのは、アミロイドβを排出する機能が衰えてしばらく経ってからということになるわけです。
「若年性アルツハイマー型認知症」はこれまで遺伝性と言われてきましたが、日本大学歯学部・落合邦康特任教授は、歯周病によって若いときに発症する可能性を指摘しています。
歯周病のケアを早めに
歯周病が認知症の原因になるとわかっていても、若い時から正しく歯周病予防をおこなっている人は少ないようです。
平成31年度の厚労省の資料によれば、歯周病の年代別感染者数は、次のようになっています。引用:テレ朝モーニングショー 2020.10.29
- 60代 約80%
- 40代 約70%
- 20代 約60%
なんと歯周病は、2001年には、世界で最も患者が多い感染症として、ギネス認定されているとのこと。
前述の落合邦康特任教授は、つぎのようにコメントしています。
人間は口から老いていき、口が原因で死ぬ
”口が原因で死ぬ”とは、歯周病が影響する疾患として、以下のようなリスクが考えられるからです。
- 心疾患 リスク2.2倍
- 動脈硬化 リスク2.7倍
- 糖尿病 リスク3.4倍
- 誤嚥性肺炎 リスク4.5倍
- 骨粗しょう症 リスク6.3倍
歯周病の進行度のチェックは?
落合邦康特任教授による「歯周病のチェック項目」では、3項目以上該当⇒要注意、6項目以上⇒歯周病が進行のおそれあり、とのこと。
<歯周病進行度チェック>
- 朝起きたとき口の中がネバネバ
- 歯磨きすると出血
- 口臭が気になる
- 歯ぐきがむず痒い・痛い
- 堅いものが噛みにくい
- 歯ぐきが赤く腫れている
- 歯が長くなったような気がする
- 前歯が出っぱになったり、歯と歯の間にすき間が出てきた、食べ物が挟まる
いくつ当てはまりました?
とくに、口臭が気になる人は、その原因が歯周病にあることが多いので要注意!
歯周病は口内フローラの乱れも原因に!
口内にも、腸内と同じように「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」が口内フローラをつくっています。口内フローラの悪玉菌が優勢になると、歯周病の原因に。
口臭ケアに、マウスウォッシュを使う方も多いと思いますが、成分が強いものを日常的に使っていると、善玉菌も死んでしまうので要注意!
口内のフローラバランスを整えるには、善玉菌を補うことも一つの方法です。ちょうど、腸内のフローラバランスを整えるのと同じこと。
善玉菌とは乳酸菌のことで、多くの種類がありそれぞれのはたらき方が違います。また乳酸菌を配合したサプリは、乳酸菌が生きたまま腸内までとどいて、腸内フローラのバランスにもはたらくものが多いことも特徴の一つです。
口臭サプリは、メーカーによってさまざまな乳酸菌を配合していて、ロイテリ菌のように世界的によく知られた特許取得の乳酸菌もあります。
これを配合したのが、オハヨー『ロイテリ』です。
わかもと製薬『アバンビーズ』は、福岡歯科大学との共同研究で開発したWB21乳酸菌(ラクトバチルス・サリバリウス)を配合。
チュアブル錠『ムシバイ』は、熱に強いクリスパタス菌を配合し、子供がおやつ感覚で摂ることができるのが特徴。
歯周病への直接的なケアではありませんが、善玉菌をおぎなう習慣、ぜひ始めてみてください。
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